私の人生に大きな影響をもたらした人

オノ・ヨーコさん

私がヨーコさんに出会った、というか

ヨーコさんの作品に出会ったのは、

20代半ばから後半。

正直、はっきりと覚えていない。

私は20代半ばから後半、激しくその時の夢を追いかけていて

環境も激しく変わっていたのでよくわからなくなっている。

とにかく、そんな最中だったと思う。

友達に誘われて、埼玉にあったジョンレノンミュージアムに行った時だった。

当時の私は、

ジョンレノンは有名で伝説的な人、というイメージしかなかった。

もちろんビートルズの音楽は聞いたことがあったけど、

それまでだった。

ヨーコさんにおいては、

その有名なジョンレノンの妻で、同じ日本人、というイメージしかなかった。

アーティスト、というのも知ってはいたけど、

作品は知らなかった。

正直、名ばかりなのかなと思い込んでいた。

そう思い込んでいたのは、

なんとなく日本でも悪い印象をやんわりと流布されていたからのように思う。

そして、当時の私はなんの疑いもなく、

そのやんわりとしたイメージを受け入れていた。

アートとの距離が遠かったその時の私のヨーコさんに対する印象は、

ごく一般的なものだった。

2人に対してのイメージはその程度だったけど、

友達に誘われたからという理由で埼玉まで行った。

(友達も、地元が同じ千葉の友達で、埼玉は遠い)

そんなわけで、なんの前情報もなく

ただ、行った。

友達と見て回るなかで、

少し先を見ていた友達が、私の方に来て言った。

「すごいよ、あれ!」

「何が?」

と思って目をやると、

そこにははしごがあり、

天井から虫眼鏡がぶら下がっていた。

「何が?」

やっぱりそう思いながら、

はしごを上り、

虫眼鏡で天井を覗いてみたその瞬間、

それまでに感じがことのない感覚を体の中に感じた。

まるで、灯火が私の中にぽっと灯ったように、

瞬く間に私の体の中があたたかくなるのを感じたのだ。

そう、私が体験したのは、

「天井の絵」

だった。

ジョンとヨーコの出会いにおいて、

とても重要な作品だ。

だからこそ、そこに展示してあったのだろうけど、

今のようにネットで事前にあれこれと調べるような時代でもなかったので、

私は一切の前情報なく、天井の絵を体験することができた。

まさに、ジョンが体験したのと同じように、

私もそれを純粋に体験することができた。

とてつもない感動だった。

それまでアートを見た時に感じたものとは、

まったく性質が違うものだった。

そして何より、大きくあたたかい感覚だった。

本当に、驚いた。

ヨーコさんて、

名ばかりのアーティストかと思っていたら違ったんだ。

本物のアーティストだったんだ!

その時、そうはっきりとわかった。

それ以来、

私は今でも「天井の絵」を体験したシーンを思い出すと、

当時と同じように体にじわっとあたたかさを感じる。

何十年経っても、だ。

そのくらい、ものすごい作品だ。

ただ、だ。

当時の私は、その時の夢に向かって全力で突っ走っていた。

だから、ヨーコさんについて深掘りすることはなかった。

そのまま、荒波の中を泳ぎ続ける生活を送っていて、

長い間、天井の絵の体験についてはっきりと覚えてはいても、

それまでだった。

しかし、それから20年くらい経ち、

紆余曲折ののちにようやく自分でアートをつくるようになったある時、

ふと気がついた。

ここまで導いてくれたのはあの時にヨーコさんからもらった、

あのあたたかい感覚だったのではないだろうか?

と。

そして思い返せば思い返すほど、

私はあの時ヨーコさんから

とてつもなく大事な種をもらった。

大きな愛のある、あたたかな種を。

そんな気がしてならない。

そしてそれが、自分のなかで長い年月をかけ、

自分の知らないうちに芽が出て、

大きな木になり、豊かに葉が生い茂り、

私を内側からつんつんとつついた。

ついにはその木が自分をつき破るほどに大きくなり、

私は本当に自分がやりたかったことをやることになった。

私が本当の私を生きることを、

大きなあたたかな愛で全力でサポートしてくれた。

出来すぎかもしれないが、

本当にそんな気がしてならないのだ。

ヨーコさんの作品を純粋に体験できた人は、

きっと同じように大きな愛を受け取っているだろうと思う。

自分では気がついていなかったとしても。

簡単に人に憧れるつもりはないけど、

ヨーコさんには確実に憧れている。

アーティスト、というだけでなく、

どこまでも純粋に人間として生きているところに。

かといって私はヨーコさんになれないし、

なる必要もない。

ヨーコさんからもらったものを大切に、

ヨーコさんのように全力で、

自分なりの表現をして生きていきたい。

心からそう思っている。

2026.10.18

mienaimonotachi

みえないものたち

YokoOno_Music of the Mind_TateModern2024